古い町の、
街中から離れた、
石畳の路地の、
もう一筋裏。
外は暗く、
店の奥に白い光が静かに灯る。
路地の先が白く照る。
昼間の雨で濡れた。
陶器をさわる音。
水の音。
湯の沸くにおい。
弱いだいだい色の小さな光が、扉を射した。
椅子にかけ、珈琲をすすりながら、新聞を読む店主。
鈴が揺れる。
扉が薄く開き、小柄な男が姿を現す。肩にカメラ。
「やあ」
「いらっしゃい」
男はカウンターにかけた。店主は豆挽きに手を伸ばす。
ひと仕事終わってね。
男の目は、意志と自信と希望の強い光に満ちている。
鞄から伸ばした写真を取り出しては、カウンターの上に展げた。
灯りをこっちへ。暗くてよく見えない。
言われて店主が火を入れたらんぷを、男が傍に引き寄せる。
店主の手が燐寸の火に白く照らされた。
男はいちまいいちまい、写真の話をした。
店主は黙って聞いている。手だけは澱みなく動かしながら。
男の前に、珈琲を静かに出して
店主は男の向かいに座った。
いいねえ。店主は珈琲をすする。
今度、おれにも撮らせてよ。
どうだろう。きみはへただからね。
カメラマンが笑った。
- 2007-12-22(Sat) 13:33:38|
- 葉|
-
0|
-
2
久方振り
あーいいなぁ温かいお話ですね。
リッちゃんの作品を読むのは久しぶりだけれど、やはり淡いのだなあと思うのでした。
包み込む暖かみのある淡さだと僕は思うのですよ。
年末年始はこちらに帰ってくるのでしょうか?
また会いたいと思うのですけれど。